ホーム > 知床白書 > 知床世界自然遺産地域年次報告書(平成24年度)

 知床白書    Shiretoko White Paper

V 知床世界自然遺産地域等の利用状況と評価

1. 観光レクリエーション利用

2. 漁業の状況

3. 法令に基づく許可行為

2.漁業の状況

 遺産地域の中で漁業は最も重要な産業であり、斜里町ではウトロ漁協、斜里第一漁協、羅臼町では羅臼漁協の3漁協が母体となっている。操業形態は、斜里町ではサケマス定置網漁業が主体で、羅臼町はサケマス定置網漁業に加えて、スケトウダラ、ホッケ、カレイ類などの底魚類を漁獲対象とする底刺し網漁業、底はえ縄漁業、一部イカ釣り漁業など多様な操業が実施されている。さらに、天然コンブやウニ類の採取も重要な漁業である。
 平成24年度の漁獲量および生産額は、斜里町が漁獲量26.6千トン、生産額105.9億円、羅臼町が漁獲量43.2千トン、生産額127.7億円であり、両町の総漁獲量は69.8千トン、総生産額は233.6億円となっている。北海道における平成23年度の漁獲量(養殖を含む)は129.3万トンであり、知床海域の漁獲量は全道の漁獲量の約7%を占めている。
 斜里町の漁獲量および生産額は、サケマス類が漁獲量で約70%、生産額で約80%を占めており、ふ化放流事業によって沿岸に回帰してくる親魚の持続的利用と適切な種苗生産放流事業が今後も重要と言える。特に平成24年度は、全道的にサケの回帰が減少している中で、斜里町のサケ漁獲量は20,130トンと、平成15年度以降の平均漁獲量(29万トン)と比較して80%に留まっている。ただし、生産額は90.07億円であり、平成23年度の137.5億円より減少しているが、過去10年間の平均生産額(80.5億円)の112%となっている。なお、特記すべき現象として、10-11月のサケ定置網に南方種のブリが入網している。今後、このような南方からの回遊魚の動向に注視する必要がある。
 一方、羅臼町の平成24年度のサケの漁獲量は7,170トンであり、平成22年度の6,865トン、平成23年度の7,370トンと、それ以前の1万トン前後の漁獲量より、顕著に減少している。これに対して、冬生まれ群のスルメイカの漁獲量は14,580トンと、平成23年度の2万6千トンと比較して少なくなっているが、生産額は35.9億円とサケの36.4億円とほぼ同じとなっている。また、スケトウダラは、依然低水準のままであり、漁獲量も約1万トン前後で推移している。
 以上のことから、平成24年度の知床地域の漁業は、対象魚種の増減はあるものの、生産額では高い水準を維持している。しかし、安定した漁業対象であったサケマス類の漁獲量に大きな変動が見られており、また根室海峡に来遊するスルメイカも、その漁獲量は秋以降の海洋環境に大きく左右されている。平成24年度の秋以降の海面水温は、平成22,23年度と同じく平年に比べて高水温が続いていた。これが温帯性スルメイカやブリの北上回遊をもたらし、逆に沿岸に回帰するサケ類の来遊量の減少と、オホーツク海沿岸への来遊の偏りを生じさせたと推定される。また、スケトウダラについては、オホーツク海全体の資源量の増加傾向があるものの、根室海峡での羅臼沿岸のスケトウダラ漁獲量には、その影響が認められていない。今後の資源動向に注視する必要がある。

図V-2. 斜里町の漁獲量・漁獲高の推移

図V-3. 羅臼町の漁獲量・漁獲高の推移