ヒグマ

1.計画策定の経緯
 知床半島のヒグマ個体群は世界有数の高密度状態で維持されており、生態系の構成要素として、また観光資源としても重要な動物である一方で、利用者との遭遇、地域住民との軋轢、農業・漁業被害など、多くの問題が発生しています。
 このため、ヒグマ対策を統一的に推進するための広域的な対応方針として、2012年3月に「知床半島ヒグマ保護管理方針」を策定し、2017年4月にはその改定計画となる「知床半島ヒグマ管理計画」を策定することで、ヒグマ出没時における現状調査や追い払い、駆除、パトロール、電気柵の設置等の総合的なヒグマ対策を展開してきました。 2022年4月には「第2期知床半島ヒグマ管理計画(以下「第2期計画」という。)を策定しました。

2.第2期計画の概要
(1) 目的
 本計画は、知床世界自然遺産地域及び隣接する地域(以下「隣接地域」という。)における住民の生活や産業を守り、利用者の安全と良質な自然体験の場を確保しながら、サケ科魚類等の捕食を通じて知床半島の海域と陸域の生態系の物質循環に貢献するヒグマについて、その生態及び個体群を将来にわたって持続的に維持することを目的として策定しました。

(2) 計画の位置づけ
 本計画は、北海道が定める第二種特定鳥獣管理計画「北海道ヒグマ管理計画」の地域計画として位置づけられています。
 また、「知床世界自然遺産地域管理計画」及び鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律に基づく「被害防止計画」などの関連計画と整合を図って実施します。

(3) 計画期間
 2022年4月1日〜2028年3月31日(6年間)

(4) 計画対象地域
 知床半島に生息するヒグマの行動圏である斜里町、羅臼町及び標津町を対象地域とし、知床世界自然遺産地域及び隣接地域の一体的な管理を行います。
 
(5) 策定主体
 環境省釧路自然環境事務所、林野庁北海道森林管理局、北海道、斜里町、羅臼町、標津町

(6) 第2期計画の主なポイント

1)目標の見直し
 第1期計画の総括等を踏まえ、本計画において達成すべき8つの目標を設定。

---------------------------------------
<本計画の目標>

@計画期間内における、斜里町、羅臼町及び標津町内でのメスヒグマの人為的な死亡総数の上限目安を108頭以下とする。

A計画期間内における、ヒグマによる人身事故(利用者等)をゼロとする。

B利用者の問題行動に起因する危険事例の発生件数を現状(第1期計画期間の年平均値)以下に抑制する。

C地域住民や事業者の問題行動に起因する危険事例の発生件数を現状以下に抑制する。

D市街地(ゾーン4)への出没件数を現状以下に抑制する。

E斜里町における農業被害面積を現状から5%削減する。

F漁業活動に関係する危険事例の発生件数を現状以下に抑制する。

Gヒグマによる人身事故を引き起こさないための知識、ヒグマに負の影響を与えずにふるまうための知識を地域住民や利用者に現状以上に浸透させる。

---------------------------------------

2)管理の方策の見直し
 ヒグマの適正管理のため、関係行政機関及び地域関係団体等と連携し、利用者や地域住民に対してする指導・啓発を徹底し、必要な情報公開と周知を行います。
 また、計画改定に当たり、現場対応の実態に合わせて対象地域のゾーニングを見直すとともに、行動段階区分のうち、「段階3」「段階2」に加えて「段階1+」を「問題個体」として位置づけました。

---------------------------------------
<ヒグマの行動段階区分>

段階0:人を避ける。人との出会いを積極的に回避し、出会った場合にも逃走していくような個体。

段階1:人を避けない。人に出会っても慌てて逃走するような行動は見られないが、人為的食物を食べてはいない。

段階1+:段階1ではあるが行動改善が見られない個体。人間の所有物に実害を与えているとまで言えないが、強い興味を示す行動等が見られる個体。

段階2:人の活動に実害をもたらす。人為的食物を食べた個体、あるいは、農作物や漁獲物、人家等人間の所有物に直接被害を与えた個体。

段階3:人につきまとう、または人を攻撃する。

---------------------------------------

3)人為的な死亡総数の設定
 環境研究総合推進費「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」の結果を活用し、知床半島におけるヒグマ個体群の保全及びヒグマと地域住民の軋轢緩和の観点から、個体群動態モニタリングとその検証の実施を前提として、本計画期間(6年間)におけるメス捕獲数の上限目安を108頭以下(18頭/年を上限目安)と設定しました。
 なお、今後の個体群動態モニタリングとその検証の結果、必要と考えられる場合には、計画期間中であっても当該目標の見直しを行います。



資料


参考

 

PDFファイルをご覧いただくには、アプリケーション『Adobe Acrobat Reader(アドビアクロバットリーダー)』が必要です。右のアイコンをクリックし、無料配布されているアクロバットリーダーをダウンロードしてください。(注:接続回線の状況によっては時間がかかる場合があります)
Adobe Acrobat Reader(アドビアクロバットリーダー)をダウンロードする
このページの先頭へ戻るこのページの先頭へ