ホーム > 知床白書 > 知床世界自然遺産地域年次報告書(平成24年度)

 知床白書    Shiretoko White Paper

IV 知床世界自然遺産地域の生態系と生物多様性の現況と評価

2. 河川生態系

3. 海洋生態系

3.海洋生態系

 知床世界自然遺産地域の海域は北半球最南端の季節海氷域であるが、海氷の観測された日数及び流入量とも減少傾向が見られる。また、オホーツク海の風上の気温はこの50年で2℃、網走沿岸の4月から12月までの平均海面水温は1℃上昇している。 オホーツク海の海氷生成量の減少に伴い重い水の潜り込みが減少したため、オホーツク海から北太平洋西部にかけて海水の鉛直混合が弱まっていることが示唆されている。 分類学的指数による浅海域の生物多様性は高く、また、世界的には減少傾向にある海洋栄養段階レベルは、本海域では増加している。

(1)魚類

 知床周辺海域に出現する魚類は26目74科223種に及び、遺産地域内海域では150種が確認され、サケ類、スケトウダラ、ホッケ、ソイ類、タラ類、カレイ類、頭足類などが多数生息しており、これらの主要な餌生物としては、カイアシ類、オキアミ類などが挙げられる。また、サケ類の産卵回遊ルート、スケトウダラの産卵場となっている。
 平成23(2011)年度のサケの漁獲量は斜里町では高位水準(約2万5千トン)である一方、羅臼町では2003年度の2万8千トンをピークに2011年度は約7.5千トンまで減少している。平成24(2012)年度の漁獲統計は公表されていないが、斜里町、羅臼町とも減少している。2年の生活年周期を有するカラフトマスの偶数年級群と奇数年級群とも、2011年度は斜里町、羅臼町とも過去の漁獲量の平均値より低く、河川捕獲数も減少傾向にある。速報ではあるが、2012年度も不漁となっている。
 改良された河川工作物の上流域では、産卵床数あるいは産卵環境収容力が増加しており、遺産内の再生産環境は徐々に回復傾向にある。また、一定程度の河川遡上は保証されているが、生態系サービスとしてのサケマスの役割を促進させるためには、上流への遡上数の増加と産卵環境の改善が今後とも必要である。
 スケトウダラは主に羅臼側の根室海峡で漁獲されており、その漁獲量は平成元年度のピーク時の10分の1程度まで落ち込んでおり、ここ数年は横ばい(約1万トン)で推移している。羅臼町においては、水温など環境変化の影響によると考えられる漁場、漁期の変化が認められており、これに伴い産卵期の漁獲量が減少しているが、標津町などで産卵期以外の漁獲量が増加している。
 なお、2010年度以降、10-11月のスルメイカの漁獲量が、特に羅臼町で増加している。2012年度は斜里町沿岸のサケ定置網にブリ、スルメイカの入網が起きている。一方、2011年度以降は、ホッケの漁獲量が著しく減少している。こうした現象は、秋以降の宗谷暖流の勢力が強く、南方からの回遊種の増加、秋に産卵のために接岸するホッケの減少をもたらしている可能性がある。
 安定した漁業を持続的に維持していくために、漁業者による自主規制など資源保護への取り組みの協力も得ていく一方で、海洋環境変化と水産資源の動向のモニタリングを継続していく必要がある。(桜井泰憲委員)