管理計画では、主に分野ごとの管理の方策を定めている。各対象分野等で設定されている管理の方策は以下のとおりである。
1.陸上生態系及び自然景観 (27項目) |
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①野生生物の保護管理 (22項目) |
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○植物 (7項目) |
・各種保護制度に基づく適正かつ効果的な管理。 |
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・調査研究・モニタリングを行い、その結果を基に人為的な影響の軽減、適切な保全対策の実施。(特に知床連山、知床沼周辺、知床岬等) |
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・シレトコスミレやチシマコハマギク等の希少種の盗掘防止のためのパトロール強化。 |
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・エゾシカの採食圧による自然植生への影響把握(特に越冬地周辺部、高山帯、海岸)と対策の検討。 |
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・知床岬地区のエゾシカ侵入防止柵等による地域固有の遺伝子資源の保存と植生の回復状況モニタリング、保護対策の検討。 |
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・外来植物(海岸を中心)の侵入・定着実態の把握と防除や普及啓発等の対策検討。 |
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・「しれとこ100平方メートル運動地」での森林の回復事業。 |
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○動物 (15項目) |
・各種保護制度に基づく多種多様な野生動物の生息地の保全と野生動物の適正な管理。 |
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・著しく増加あるいは減少した野生動物について生息状況と変動の要因の把握及び必要な対策の検討。 |
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・調査研究の推進と、必要に応じて個別の野生動物毎の保護管理計画の検討。 |
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・人の利用の適正な誘導、餌やり等の防止、ゴミの持ち帰り等の指導、野生動物の生態等に関する普及啓発の推進。 |
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・ルシャ、テッパンベツ川流域での植物の採取・損傷、たき火、車馬の乗入れ、撮影その他、野生鳥獣の生息に影響を及ぼす行為の規制。 |
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(a)エゾシカ |
・「知床半島エゾシカ保護管理計画」に基づく保護管理。 |
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・北海道全体のエゾシカの管理と緊密な連携の確保。 |
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(b)ヒグマ |
・行動調査や生息環境の利用状況調査等の結果を踏まえ個体群動態を把握し、適正な保護管理を実施。 |
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・誘引物の除去、追い払い等の対応、利用者の行動制限を含む利用システムの構築、適切な施設整備及び利用者等への普及啓発、情報提供の実施。 |
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(c)シマフクロウ |
・保護増殖事業計画に基づいた保護増殖事業の実施。 |
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・つがいの生息が確認されている河川の周辺の自然環境を極力、現状のまま維持。また、必要に応じ生息環境の改善。 |
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・入り込み者への指導の実施。繁殖状況把握のためのモニタリング調査、巣立ちビナの移動分散・生存状況を把握するための標識調査等の実施。 |
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(d)オオワシ・ |
・海岸斜面の森林の保全。繁殖期における利用者への指導、普及啓発の実施。 |
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・北海道内でのエゾシカ猟における鉛弾の使用禁止の徹底。 |
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・保護増殖事業計画に基づく餌資源調査等の推進。また渡りルートの解明や行動生態の把握の実施。 |
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②自然景観の保全 (2項目) |
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・保護地域制度に基づく、規制等の適正な運用。植生の保護・回復や生態系の管理に係る事業の実施等を通じた、遺産地域の優れた自然景観の保全。 |
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・海岸部に漂着したゴミ等の除去。 |
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③外来種への対応 (3項目) |
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・定着実態の把握と有効な対策や普及啓発等の実施。 |
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・特定外来生物に係る行為規制の適切な運用と普及啓発の実施。 |
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・ブラウントラウト、カワマスなど5魚種の移植禁止に係る普及啓発の実施。 |
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2.海域 (1項目) |
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・「知床世界自然遺産地域多利用型統合的海域管理計画」に基づく、管理の実施。 |
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3.海域と陸域の相互関係 (2項目) |
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①河川環境の保全 (1項目) |
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・改良が適当と判断した河川工作物の改良の実施。改良後のモニタリング調査による状況把握と改良効果の検証の実施。 |
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②サケ科魚類の利用と保全 (1項目) |
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・「知床世界自然遺産地域多利用型統合的海域管理計画」に基づく持続的な利用と保全の推進。 |
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4.自然の適正な利用 (24項目) |
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①利用の適正化 (3項目) |
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・利用適正化基本計画に基づく適正な管理の推進。 |
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・「利用の心得」の普及啓発の実施。 |
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・必要に応じて利用調整地区の導入による利用者数、利用期間等の調整の検討。 |
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②エコツーリズムの推進 (2項目) |
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・「知床エコツーリズム推進計画」に基づく、人材の育成及び利用プログラムの構築と実践。 |
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・「知床エコツーリズムガイドライン」の効果的な運用。 |
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③主要利用形態毎の対応方針 (19項目) |
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○観光周遊 |
・主要な利用拠点や展望地の適切な整備。 |
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・自動車利用の適正化と環境に配慮した交通システムの構築の推進。 |
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・シャトルバスの導入の可能性や効果の検討。 |
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・カムイワッカ地区の夏期の自動車利用適正化対策の効果の検証。対策の一層の充実と具体化。 |
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・知床五湖地区での効果的な利用の制限、誘導や普及啓発、施設整備のあり方、ヒグマの保護管理のあり方の検討と必要な対策の実施。 |
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・知床横断道路での駐車規制の実施と道路の適切な維持管理。羅臼湖の適正な利用のあり方の検討。 |
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・利用に伴う野生動物への悪影響を防ぐためのルールの普及啓発。 |
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○登山・トレッキング |
・自然環境保全上の配慮事項等の指導・普及啓発の実施。必要に応じて、利用の制限等の適切な措置の実施。 |
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・歩道等の適切な整備と維持管理。 |
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・キャンプに係る利用者への指導の徹底。フードロッカー、フードコンテナ利用に関する指導、普及啓発の実施。し尿処理に関するルールやマナーの普及啓発。 |
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○海域のレクリエーション利用(5項目) |
・「知床岬地区の利用規制指導に関する申し合わせ」等による観光目的での上陸の抑制の徹底・強化。 |
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・海域のレクリエーション利用のルールづくりと普及啓発の実施。 |
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・「利用の心得」等に基づくシーカヤックでの利用の適正化。 |
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・釣りを目的とした上陸場所の特定、関係法令・規則の遵守、ゴミの持ち帰りや釣り上げた魚の適切な処置等に関する指導の強化。 |
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・ルールの遵守による漁業生産活動への支障の防止。 |
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○その他の利用 |
・利用者への指導や普及啓発活動による野生動物の写真撮影や観察の抑制。ルシャ・テッパンベツ川流域での適正な指導、管理。 |
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・冬期における雪上レクリエーション利用での事前指導や普及啓発の実施。雪崩等の危険区域の周知徹底。 |
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・スノーモービルの乗入れや航空機の着陸の規制に係る巡視・取締りの実施。必要に応じ航空機の低空飛行を行わないよう要請。 |
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・必要に応じ流氷上でのレクリエーション利用のルールづくりの実施。 |
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5.気候変動 (1項目) |
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・モニタリングを実施するとともに、適応策を検討、実施する。 |
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6.情報の共有と普及啓発 (3項目) |
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・地域住民、関係行政機関、関係団体、専門家等が自然のすばらしさ、保全・管理の状況、モニタリングのデータ等を共有する。 |
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・利用者に対し、野生動物への対処等のルール・マナーを周知する。 |
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・国際機関や他の保護地域の関係者と管理体制等について情報を共有する。 |
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7.その他 (9項目) |
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①遺産地域の管理に係る関係行政機関及び地元自治体の体制 (1項目) |
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・行政機関は、相互に必要な情報の共有を図り、緊密な連携の元に適切に管理を進める。 |
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②保全・管理事業の実施 (4項目) |
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○関係機関等による巡視(1項目) |
・巡視体制の一層の充実・効率化に努める。
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○保全・管理事業の実施(2項目) |
・立入防止、植生復元、外来種の除去等を目的とした標識や柵等の設置。 |
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・美化清掃活動や施設の維持管理、林野火災予防。 |
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○知床世界遺産センターその他主要施設の運営方針(1項目) |
・遺産地域の保全管理や適正な利用に係る施設において、情報の収集・蓄積やルール・マナーの啓発、調査研究の推進等を実施するとともに、施設間の連携を図り、情報の交換、共有化を促進する。
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③調査研究・モニタリング (3項目) |
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・長期的なモニタリング及びその評価を実施する。特に気候変動に関するモニタリングを実施する。 |
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・調査研究(遺産地域の価値を裏付けるもの、特定の課題への対策を講じるためのもの、モニタリング手法の開発につながるもの等)を実施する。 |
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・知床データセンターによる情報の共有を図る。 |
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④年次報告書の作成 (1項目) |
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・年次報告書をとりまとめ、遺産地域の適切な管理に活かす。 |
※「知床世界自然遺産地域管理計画」p.9~17参照