ホーム > 知床白書 > 知床世界自然遺産地域年次報告書(平成24年度)

 知床白書    Shiretoko White Paper

付録

1. 社会環境

5. 調査等事業

6. 普及啓発イベント一覧

7. 普及啓発資料一覧

9. 事務所一覧

5.調査等事業

(15)ヒグマの目撃・出没状況、被害発生状況に関する調査

資料名

平成24年度生物多様性の保全と活用による国立公園活性化事業(グリーンエキスパート) 知床世界遺産地域における利用の適正化と野生生物との共生推進事業報告書

調査主体・事業費

環境省 約750万円

評価項目

レクリエーション利用等の人為的活動と自然環境保全が両立されていること。

評価指標

出没及び被害発生の状況

評価基準

出没状況:現状を上回らないこと。
被害:人身被害が発生しないこと、その他の被害は現状以下に。

<平成24年度の具体的調査手法>
○ヒグマ目撃情報の収集
 ヒグマ出没状況は、斜里側においては観光客などによるヒグマ目撃情報をアンケート形式で随時収集することによって把握した(以下、アンケートとする)。羅臼側においては、国立公園区域外も含む町内全域のヒグマ出没に関する通報ルート(町役場経由、主に地元住民が目撃・通報)による情報提供が主体のため、アンケート以外にそれらも含めた。アンケート用紙はヒグマを目撃した場所、日時、状況、および個体の特徴などを記入するもので、知床国立公園内にある主要な施設(知床自然センター、鳥獣保護区管理センター、知床世界遺産センター、知床五湖フィールドハウス、木下小屋、羅臼ビジターセンター、ルサフィールドハウス)に配置されている。アンケートは電話や口頭でヒグマ目撃情報を入手した場合や、偶然ヒグマを目撃した場合にも記録した。収集したアンケートは地区別に集計した。

<平成24年度の具体的調査データ>
 平成24年4月〜平成25年3月20日現在までの期間中(以下、今年度)、知床国立公園及び国指定知床鳥獣保護区におけるヒグマ目撃件数は、合計1,982件であり、昨年度同期の951件より1,031件多かった。町別の目撃件数は、斜里町側が1,702件、羅臼町側が280件となり、両町とも昨年度と比較して大幅に多かった。

表 知床国立公園および国指定知床鳥獣保護区における地区別・月別のヒグマ目撃件数

<コメント>
○斜里側
 斜里側の国立公園および鳥獣保護区におけるヒグマ目撃件数は、合計1,702件であり、昨年度の759件より943件多くなった。斜里側の目撃件数は過去5年間において500〜700件程度で推移していたが、今年度の目撃件数は例年の2倍以上となり、また過去最多記録となった。
 月別の目撃件数は、8月に最多の487件となり、次いで7月が439件となった。例年は7月が最多となり8月は減少する傾向が見られるが、今年度の8月は昨年82件の約6倍となった。
 目撃件数を地区別に集計すると、幌別・岩尾別地区が最も多く1,192件、次いで知床五湖園地地区が198件、幌別川−オペケプ川地区が125件と続いた。この3地区は特に昨年度と比較して目撃件数が多くなった。幌別・岩尾別地区では737件、知床五湖園地地区では140件、幌別川−オペケプ川地区では75件、昨年度よりそれぞれ多かった。
 今年度においてもヒグマによる人身事故は発生していないが、危険なヒグマの出没や遭遇事例が複数回確認された。国立公園内では人を恐れずに道路沿いや施設付近に出没するヒグマが頻繁に目撃され、公園利用者とヒグマが近距離で遭遇しやすい状況が発生した。そのような中で、公園利用者がヒグマに餌を投げ与える事例や、道路沿いに不法投棄された生ゴミをヒグマが食べる事例、ヒグマに接近しすぎた観光客が威嚇され驚いて転倒し軽傷を負う事例などが確認された。

○羅臼側
 羅臼側の国立公園および鳥獣保護区におけるヒグマ目撃件数は、合計280件であり、昨年度の192件より大幅に増加した。
 月別の目撃件数は、8月が最多で100件となった。目撃件数が羅臼側で最も多かった地区は羅臼市街地北側−岬町地区の鳥獣保護区内で、129件の目撃があり、昨年度の60件から倍以上の増加となった。一方、昨年度最多の目撃があったルサ−知床岬地区は112件で、昨年度の105件と比較して僅かな増加に留まった。湯ノ沢町−知床峠地区での目撃は39件(羅臼岳登山道の羅臼温泉ルート上での9件を含む)であった。
 今年度は、羅臼市街地北側−岬町地区において、海岸町および岬町の住宅裏(鳥獣保護区内)で複数個体が繰り返し目撃されたことが最多目撃件数となる要因となった。特に、海岸町の天狗岩付近と岬町のモセカルベツ地区では、一般住宅から排出された生ゴミや水産加工場の残渣に餌付いたとみられる個体が頻繁に目撃された。岬町の知円別地区では、生ゴミ等を荒らされるといった被害は報告されていないが、道路沿いに生育したフキを採食するために現れた個体が頻繁に目撃された。ルサ−知床岬地区では、相泊以北の崩浜で大型のクジラ死体が漂着したことにより複数の個体が誘引され、8月9日から約1カ月にわたり、入れ代わり採食し続けたため、遊漁船および海岸トレッカーからのヒグマ目撃情報が多数寄せられる結果となった。湯ノ沢町−知床峠地区では、知床横断道路沿いの羅臼湖入口〜知床峠駐車場にかけて、0歳子2頭連れの親子が複数回目撃された。また、知床国立公園羅臼温泉野営場のキャンプサイト内で目撃された事例があった。
 なお、8月にピークとなったヒグマの目撃は、9月前半まで高頻度で推移した後、同月の後半では急速に収束し、昨年度最多だった10月には、目撃件数は1件のみとなった。