ホーム > 知床白書 > 知床世界自然遺産地域年次報告書(平成23年度)

 知床白書    Shiretoko White Paper

IV 知床世界自然遺産地域の利用状況と評価

1. 観光レクリエーション利用

2. 漁業の状況

3. その他の開発行為

3. その他の開発行為

知床世界自然遺産地域内の平成23年度の開発行為は、知床国立公園区域内において、慣例となっている漁業のための土石の採取が斜里町で1件、羅臼町で2件実施されたほか、電柱の建替えや落石防護柵工等の比較的小規模な事業が行われた。遺産地域周辺においては、道路の法面補修やトンネル工、漁港の岸壁補修等が行われた。

以下に、自然公園法に基づき許可されたもののうち、特別保護地区(※1)内のもの(ただし、学術研究のための植物の採取や仮設工作物の設置等自然環境への影響が一過性のもの、首席自然保護官専決(※2)のものは除く)及び、特別地域(※1)における改変行為の規模が面積300m2以上または延長300m以上のもの、遺産地域周辺における開発行為を記載する。

詳細については巻末付録「2. その他の開発行為」参照。

個別の事業に関しては、特に以下の2事業について、今後の検討や改善を要すると考えられる。

(10)国道334号法面補修
地形改変を極力抑え、牧草等の外来種の使用を控えた工法は評価できるが、事業実施箇所は知床峠を通過する来訪者が知床特有の亜高山帯の景観を楽しむ地域であり、さらに景観に配慮した手法をとることが望ましい。例えば、知床横断道路開通の頃に採用されていたような自然環境に配慮した法面処理、すなわち、周辺からはぎ取ってきたササの貼り付けやハイマツ等の植栽によって人工的な法面形状を、より自然に近いものとすることが望まれる。

(9)道道87号雪崩予防工及び法面工
ルサ以先の道道87号沿線は、つい20年あまり前まで、点在する漁業番屋と道路沿線の奇岩や滝が知床らしい雰囲気を醸しだしていた。相泊以先の知床核心部に行こうとする登山者やトレッカーに対しては、次第に秘境知床へ近づいていく気分を盛り上げるアプローチとして好評であった。また、知床での発展が期待されるエコツーリズムの展開において、自然ばかりでなくコンブ漁などの知床ならではの地域産業や地域の漁業者らとも触れ合うことができる場所として期待も大きかった。

ところが、大々的に進められてきた雪崩防止柵の設置や法面工事によって、環境は大きく改変され、多数の工作物で覆い尽くされ、現在は見る影も無い状況になっている。地域住民の生活や産業上の必要性と、世界遺産知床としての地域活用の展望、防災上の費用対効果や受益人口の変化などを総合的に勘案しながら、当該地域の道路維持のあり方を中長期的に再検討すべき時期にある。

特に、冬期においてはルサ以先には定住者は2世帯3名のみであり、当該工事箇所以先には1名しかおらず、しかも常時居住しているとは言えない現状がある。少なくとも雪崩防止柵については、多額の公費を投入して本件の工事を行い、冬期通行を維持する必要性には疑問がある。無数の雪崩防止柵が異様な景観を創り出した現状と、冬期通行の必要性を新たな視点で再検討すべきであろう。また、法面の施工にあたっても、直線的、平面的に切り取る工法や、コンクリートや外来種である牧草を多用した工法については、改善を図る必要があろう。より自然に近い景観を作り出す工法の工夫が望まれる。

(山中委員)

表1 平成23年度の開発行為一覧

番号 行為の内容 実施者 位置 規模
既設埋設電力ケーブルの取替え工事 電力会社 岩尾別 延長443m
土石の採取 民間漁業生産組合 ウトロ地先 採取面積800m2
採取量200m3
(約500t)
光ケーブルの架設 民間事業者 羅臼町北浜〜崩浜 延長9,875m
消波堤の設置 釧路総合振興局 相泊 敷地面積1,132m2
電柱の建て替え 電力会社 湯ノ沢 電柱5本
電線総延長1,559m
土石の採取 民間水産会社 ニカリウス国有林 採取面積120m2
採取量120m3
(約300t)
土石の採取 個人漁業者 ニカリウス国有林 採取面積189m2
採取量189m3
(約472.5t)
スリットダム新築 根釧東部森林管理署 栄町 1基 幅26m
高さ6.5m
道道87号雪崩予防工及び法面工 北海道 相泊、瀬石 雪崩予防柵34基
法面工560m2
10 国道334号法面補修 北海道開発局 岩尾別 補強土工60m
11 国道334号トンネル工及びトンネル坑口切土工 北海道開発局 宇登呂西 トンネル378m
12 国道334号落石防護柵工 北海道開発局 遠音別 落石防護柵117m
13 国道334号道路土工等 北海道開発局 日の出 道路土工2,000m3
14 国道335号橋梁補修 北海道開発局 峯浜町 高欄取替177m
15 羅臼漁港岸壁補修等 北海道開発局 羅臼漁港 岸壁1式
16 ウトロ漁港岸壁舗装工等 北海道開発局 ウトロ漁港 岸壁1式

※1
特別保護地区:公園の中で特にすぐれた自然景観、原始状態を保持している地区で、最も厳しく行為が規制される。
第1種特別地域:特別保護地区に準ずる景観をもち、特別地域のうちで風致を維持する必要性が最も高い地域であって、現在の景観を極力保護することが必要な地域。
第2種特別地域:農林漁業活動について、つとめて調整を図ることが必要な地域。
第3種特別地域:特別地域の中では風致を維持する必要性が比較的低い地域であって、通常の農林漁業活動については規制のかからない地域。

※2
水平投影面積10m2以下の仮工作物の新改増築や、立木幹材積の合計量が1m3以下の木竹の伐採の許可等は首席自然保護官の専決事項。

実施位置図