ホーム > 知床白書 > 知床世界自然遺産地域年次報告書(平成23年度)

 知床白書    Shiretoko White Paper

II 知床世界自然遺産地域の課題

1. 生態系に関する課題

2. 利用に関する課題

3. 管理に関する課題

4. 地域社会に関する課題

2. 利用に関する課題

○ヒグマ目当ての観光客による人馴れ

知床半島のヒグマ個体群は、世界有数の高密度状態で維持されており、知床を象徴する野生動物の一つとなっている。一方、遺産地域には年間約200万人の観光や登山等を目的とした来訪者が訪れている。 大型バスによる周遊や観光船による遊覧などの団体での観光や、登山、トレッキング、シーカヤックなどの体験型の観光など、多様な利用がされており、小型観光船からのヒグマ観察が旅行商品になるなど、ヒグマは重要な観光資源の一つともなっている。 しかし知床では利用者などによるヒグマへの餌付けや誘引物の放置、カメラマン等による不用意な接近などが確認されており、こうした人間側の行動も問題個体の発生、ヒグマによる被害を生む大きな一因となっている。

○トドと漁業との共存

知床周辺海域には、冬から春にかけてトドがロシア海域の繁殖場・上陸場から、個体群維持の上で重要な妊娠雌を中心とする群れが来遊し、越冬と摂餌を行っている。 日本近海に来遊するトドの集団は増加傾向にあるものの、長期的・広域的には個体数が減少していると評価されている。

一方で、知床周辺海域では来遊するトドにより漁獲物を奪われたり漁網が破られるなどの漁業被害が発生している。近年は来遊域と期間が拡大・長期化するなど、深刻な状況となっている。

トドは国際的な絶滅危惧種(IUCN(国際自然保護連合)では絶滅危惧IB類(EN)に分類。)であり個体数の減少を抑制する必要があることから、科学的な検討に基づく適切な管理による漁業被害の軽減と個体群の維持が求められている。

○利用のための希少猛禽への給餌

羅臼町では、オジロワシ、オオワシ、シマフクロウへの給餌が行われている。自然分布の変化や人間の生活圏への接近を促進させること、交通事故を引き起こす要因となること、感染症発生時に悪影響を拡大させること、人為的エサ資源に依存する個体が増加することなどの問題が指摘されている。

○知床岬への動力船による上陸

知床岬への観光目的での動力船による上陸は禁止されているが、NPO法人や地元自治体等が主体となったゴミ拾いボランティアが実施されている。参加者は関係機関、町民、観光客と様々であり、場合によっては観光ツアー的要素も含まれているため、「知床半島先端部地区利用の心得」との整合性が疑問視されている。

また、知床岬トレッキング時の復路について、小型船舶による送迎が実施されており、知床岬地区の利用規制指導に関する申し合わせとの整合性がとれていない。モイレウシ、ペキンの鼻等においては、上陸して遊漁を行うことが利用の心得において認められているが、知床岬先端部地区への動力船による上陸について、ルールや規制指導の内容を再度整理する必要がある。