ホーム > 知床白書 > 知床世界自然遺産地域年次報告書(平成23年度)

 知床白書    Shiretoko White Paper

II 知床世界自然遺産地域の課題

1. 生態系に関する課題

2. 利用に関する課題

3. 管理に関する課題

4. 地域社会に関する課題

3. 管理に関する課題

○河川工作物とサケ科魚類の産卵遡上障害

知床世界自然遺産地域の河川には、カラフトマス、シロザケ、サクラマス、オショロコマ等のサケ科魚類が生息している。これらサケ科魚類の多くは産卵期に海から河川へと遡上し、 ヒグマを含め陸棲哺乳類や、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシ等の希少猛禽類等の生物種の重要な餌資源となっており、遺産地域の陸上生態系と海洋生態系をダイナミックに結んでいる。

しかし、厳しい気象現象やそれに伴う災害から住民の生命や財産を守るために遺産地域に設置された河川工作物により、サケ科魚類の自由な移動が阻害されている可能性があるとの指摘があったことから、 河川工作物ワーキンググループを設置し、遺産地域の河川工作物の影響評価を行った。結果、5河川13基の河川工作物を改良することとなり、平成24年度中をもって全ての改良が終了する予定である。 今後は、改良後の効果を検証するためサケ科魚類の遡上等モニタリングを実施していく必要がある。

○カムイワッカ及び知床五湖における渋滞

カムイワッカ地区は知床国立公園の陸域の最深部にあたり、知床の秘境感を得られる観光利用拠点の一つである。豊かな森の中に通じる未舗装路でアクセスし、カムイワッカの湯の滝、硫黄山登山道の利用の起点となる場所である。 また、知床五湖は、原生的な自然景観の探勝を目的に年間約50万人の利用者が訪れる利用拠点である。

毎年多くの人たちが、その原始性に富む大自然や野生生物とのふれあいを求めて知床国立公園を訪れているが、その大半は夏期に集中しており、この時期の道道知床公園線の「知床五湖〜知床大橋」間のカムイワッカ方面については、 特に入り込み車両が増大する実態があった。知床五湖駐車場における平成23年度の渋滞指数を平成22年度と比較すると42%増となっている。近年利用者の集中等により歩道の荒廃及び歩道の踏み外しによる周辺植生の踏み付けや裸地化が見られる他、 不特定多数の利用者とヒグマの軋轢も生じており、利用者の集中による自然環境への負荷、利用マナーの低下などへの対策として利用の量のコントロールと質の改善を促進するため、地上歩道における利用調整地区制度が平成23年より導入されている。 これにより公園利用者の平均滞在時間が増加していることも渋滞の要因の一つと考えられる。

自然環境の保全と快適な利用環境の確保、さらには交通事故の防止に資するため、自動車利用適正化対策としてのマイカー規制が平成11年の試行を経て開始されている。