知床半島はヒグマの高密度生息地として知られており、年間の目撃数は斜里町と羅臼町で年間約700〜1,000件にのぼる。平成24年度には、例年の2倍以上となる約2,000件以上もの目撃情報が寄せられた。また、斜里町ではヒグマにえさを与えるといった行為や至近距離で写真撮影を行う観光客がみられた。
ヒグマは知床の自然を代表する野生動物である一方で、ヒグマにえさをやる等の人に慣れることにつながる行為は、近隣市街地の住民や観光客の安全を脅かすことになる可能性がある。このような課題を背景に、知床斜里町観光協会が中心となり、観光客と地域住民の安全を守りつつ、豊かな自然を体験する機会の維持と、野生動物の生息地と隣接して生活する地域住民が共存することを目的に、ヒグマへのえさやりの禁止を軸とした知床ヒグマえさやり禁止キャンペーンを、3年間の計画で開始した。
初年度となる平成25年度は、知床斜里町観光協会、ウトロ自治会、知床財団等の地域関係団体、環境省、林野庁、北海道、斜里町、羅臼町の行政機関が連携し、ホームページの開設、ホテルや道の駅等でのDVD放映、地元小学校等への出張講座の開催、周知強化月間(7月〜8月)の設定と街頭啓発活動等を実施した。このほかにも、啓発ロゴマークを用いたバッジやマグネットステッカー等の啓発グッズを活用した普及活動を展開した。啓発バッジは観光客と接する機会の多い観光施設スタッフや、ホテル従業員、ガイド事業者等が着用し、地域一体となった啓発活動を進めた。また、マグネットステッカーは、関係者だけではなく、食品配送車や空港送迎車にも貼り付ける等、町外の民間企業による協力の広がりも見られた。これらの取組は多くのマスコミにも取り上げられた。