ヒグマ

<背景>
 知床半島では、国立公園や国指定鳥獣保護区の指定、春グマ駆除制度の廃止等1980 年代以降に保護政策が強化されてきた。一方で、斜里町、羅臼町のヒグマ目撃件数は全国的にみても突出して多く、近年、人の存在を恐れず避けないヒグマ個体が増加し、遺産地域の利用者とヒグマとの遭遇や地域住民の生活圏への出没等が日常的に発生している。こうした中、2012年3月にヒグマ対策を統一的に推進するための広域的な対応方針として「知床半島ヒグマ保護管理方針」を策定し、これに基づき、ヒグマ出没時における現状調査や追い払い、駆除、パトロール、誘引物除去等の対策、電気柵等による市街地の防衛や野営地へのフードロッカー(食料保管庫)の整備、高架式木道の整備と利用調整地区制度の導入等、国内では例を見ない先進的かつ総合的な対策を展開してきたが、2017 年3月をもって当方針の計画期間が終了することから、これまでの保護管理対策の実施結果及びヒグマを取り巻く状況の変化等を踏まえ、2017 年4月以降のヒグマ対策に係る統一的な計画として知床半島ヒグマ管理計画」を策定した。

<目的>
 遺産地域及び隣接する地域における住民の生活や産業を守り、利用者の安全と良質な自然体験の場を確保しながら、サケ科魚類等の捕食を通じて知床半島の海域と陸域の生態系の物質循環に貢献するヒグマについて、その生態及び個体群を将来にわたって持続的に維持することを目的する。また、本計画は、関係行政機関や地域関係団体等で合意・共有され、ともに連携・協力してヒグマと共存するための知恵を結集することを目指すものとする。

<管理の目標>
 @計画期間内における、斜里町、羅臼町及び標津町内でのメスヒグマの人為的な死亡
  総数の目安を75 頭以下とする。
 A計画期間内における、ヒグマによる人身事故をゼロとする。
 B利用者の問題行動に起因する危険事例の発生件数を半減させる。
 C地域住民や事業者の問題行動に起因する危険事例の発生件数を半減させる。
 D市街地(ゾーン4)への出没件数を半減させる。
 E斜里町における農業被害額及び被害面積を3割削減する。(注7、8)
 F漁業活動(特に羅臼側の昆布番屋等)に関係する危険事例の発生件数を半減させる。
 Gヒグマによる人身事故を引き起こさないための知識、ヒグマに負の影響を与えずに
  ふるまうための知識を地域住民や公園利用者に現状以上に浸透させる。

<対象範囲>
 知床半島を生息地とするヒグマの行動圏である斜里町、羅臼町、標津町の3町

<管理の方策>
 対象地域を利用者や経済活動の多寡、住宅の有無などに基づき5つにゾーニングするとともに、出没個体の有害性によりヒグマの行動段階を4段階に規定し、それらに基づき適切な対策を実施する。

<実施期間>
 平成29年(2017 年)4月1日から平成34年(2022 年)3月31 日までの5年とする。 なお、本計画の終了に際しては計画の見直しを行うほか、本計画の期間内であっても必要に応じて見直しを行うなど順応的に対応する。

<計画実施主体>
 釧路自然環境事務所、北海道森林管理局、北海道、斜里町、羅臼町、標津町

資料

 

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