ウトロの海はご存知のとおりオホーツク海の南端に位置します。潮流も速く、また断崖付近では水深も深いため海上設置型のデコイの固定は技術的に難しい要素が多々あります。もちろん主要な漁獲を占めるサケ・マスの定置網漁業の障害となることも避けなければなりません。平成23年(2011年)から始まったケイマフリデコイの設置に際し、ウトロ漁業協同組合からはデコイ設置のための技術的なアドバイスと設置作業協力、設置のための資材提供がありました。オホーツクの海を生きる生き物への優しさと、同じ海を生活の場とするウトロ漁師の心意気がケイマフリ保護活動を支えています。
ウトロから出港している大型観光船「おーろら号」(道東観光開発株式会社)では、ケイマフリをはじめ海鳥の繁殖期間中の6月~7月には、運航中の海上に見られる海鳥や海棲哺乳類などの海生生物、沿岸に見られるヒグマなどの観察記録を平成23年(2011年)シーズンから行っています。季節ごとの海鳥の分布状況やイルカやヒグマの確認状況のデータを蓄積することで、観光サービスとしての情報提供を目指しています。
またこの取り組みは海域環境における日々の”パトロール”(巡視)的な役割も果たしていると言えます。今後、野生生物の生態解明に繋がる貴重な記録や、沿岸環境に深刻な影響を及ぼす油の流出事故、魚や海鳥の大量死などの海洋変化の早期発見に繋がる可能性があります。
★「おーろら号」は専門家による海鳥のモニタリング調査への協力も行っています。
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ウトロ港を拠点に営業を行っている大型観光船や小型(クルーザー)観光船事業者、シーカヤックガイド事業者の方々により、店舗および船内にてケイマフリのデコイを使ったPR展示を行っています。これまではケイマフリについてはあまり積極的に紹介されていませんでしたが、現在では知床の魅力の一つとしてケイマフリの積極的なPRを始めています。ケイマフリという海鳥が生息している事を多くの方々に知ってもらう事は保護のための第一歩で重要な要素です。
また小型(クルーザー)観光船事業者数社から組織される「知床小型観光船協議会」では、海域環境保全のための募金活動や「海鳥ミニ出前講座」への開催協力などが行なわれています。
観光船は知床を訪れる方々にとって知床の素晴らしい景観や野生動物を見る手段として重要な役割を担っています。知床の海を利用している立場として「海域の持続可能な利用」をテーマに、知床の自然環境の保全・保護と良質な観光サービスの提供を目指しています。
平成17年(2005年)に世界自然遺産地域に認定された知床半島ですが、地元の方々にとっては自分達が住み日々の暮らしを送っている生活の場です。そこに棲む希少な野生動植物をはじめ、豊かな自然環境はこれまで守り続けてきた地域の財産であり、誇りです。
「知床の将来がこれからも豊かであること・・・」
それは世界自然遺産地域に登録される前から変わる事のない、地域の皆さんの願いです。
〒099-4354
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