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 知床白書    Shiretoko White Paper

付録

1. 知床世界自然遺産地域の平成23年度レクリエーション利用状況

4. 平成23年度実施ソフト事業

5. 普及啓発イベント一覧

6. 普及啓発資料一覧

7. 各種会議等の開催状況

8. 事務所一覧

(4) エゾシカの影響からの植生の回復状況調査(環境省知床岬囲い区)

資料名 平成23年度知床生態系維持回復事業エゾシカ食害状況評価に関する植生調査及び植生指標検討調査業務
調査主体・事業費 環境省・約800万円
評価項目

遺産登録時の生物多様性が維持されていること。

エゾシカの高密度状態によって発生する遺産地域の生態系への過度な影響が発生していないこと。

評価指標 在来種の種数と種組成、採食圧への反応が早い植物群落(ササ群落etc.)の属性(高さ・被度など)
評価基準

在来種の種数と種組成:1980年代の状態へ近づくこと。

ササ群落etc.の属性:1980年代の状態へ近づくこと。

<平成23年度の具体的調査手法>

知床岬のガンコウラン群落(15m×15m)、山地高茎草本群落(1m×1m、10箇所)、亜高山高茎草本群落(20m×20m)の柵内外において、各方形区における出現種の優占度、草本層の植被率、生育段階(栄養状態、開花状態など)ならびに群落高を記録した。

<平成23年度の具体的調査データ>

<コメント>

○ガンコウラン群落

柵内では、ガンコウランの回復が続き、平均面積は前年の約2 倍となった。柵外の約35倍の面積となっており、顕著な回復が見られている。シャジクソウ・チシチマセンブリの開花株数も、柵外に比べて大きく回復しており、効果が見られた。一方、シコタンヨモギはエゾシカが忌避する傾向があり、柵内外とも増加が見られ、回復の指標としては適していない。柵外でも、ここ数年でガンコウランやチシマセンブリが増加しており、エゾシカの密度操作による効果が示唆される。

○山地高茎草本群落

柵内では、クサフジ・ハマニンニク・オオヨモギなどが設置時から10〜30ポイント増加しており、回復傾向が顕著だった。エゾノシシウドなど大型セリ科草本は繁殖を終えて被度は減少傾向にある。一方で、カラフトイチゴツナギやハマムギ、エゾオオバコなど初期に見られた植物は被覆されて減少傾向が続いている。回復後の優占種は方形区により大きく異なり、初期状態等の影響が大きいと思われる。
なお平成23年度は、本調査区の対照区として柵外に調査区を設置した。

○亜高山高茎草本群落

柵内では、7年間の保護により群落高が150cm近くまで回復し、柵外との差が70cm以上になった。特にオオヨモギの成長が著しく平均被度が50%を超えたほか、アキタブキ・シレトコトリカブト・アキカラマツなどが増加している。一方昨年度まで増加していたヒロハクサフジやクサフジは減少している。不嗜好植物のトウゲブキは平均被度20%と半分以下まで減少し、牧草類も減少した。これに対して柵外の対照区は依然トウゲブキが著しく優占し、牧草類も多く残存している。設置時に実施したトウゲブキの刈り取りは、その後すぐに回復しており、ほとんど効果が見られていない。